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90年の時を繋いで
10月26日、母校三代目校長八木貞助先生(大正13年2月~昭和8年4月)のご令孫、八木健彦東京大学名誉教授が来校されました。
きっかけは、 母校の歴史を研究されてい る 旧職員の山口通之先生が本年、東京同窓会の講演において 八木貞助校長の人物像に触れたことを健彦教授が知ったことによります。健彦教授のお父様の健三氏は貞助校長が母校在職中に伊那市で育ち、旧制伊那中学校(現伊那北高校)を卒業され、東北大学へ進まれていて、祖父と父親のゆかりのある伊那市を是非訪れたいとのことで今回のご訪問となりました。
〈祖父〉八木貞助先生(第3代校長) 山口先生が書かれた上伊那郷土研究会の 『伊那路』 への寄稿 から紹介します。貞助校長は上水内郡若槻村(現長野市)に生まれ、伊那高等女学校長として9年間在職しました。教育者 としては もとより、地質・地形などの自然科学の分野で多大な業績を残した著名な学者でした。研究の一端を毎年のように校友会誌 『友垣』 に寄稿し、生徒の学ぶ意欲を鼓舞し、学ぶにふさわしい教育環境整備に熱心に取り組みました。本校の正面から玄関までの銀杏並木は、 貞助校長の植樹計画の一つ でした。 東京大学の門の並木に倣ったものとのことです。
〈父〉八木健三先生(北海道大学・東北大学名誉教授) 教授時代にはご自身の地質、鉱物の研究に加え、全国の自然保護運動のリーダーとしても活躍されていました。母校地学教室にある貞助校長が採集した鉱物標本を2回にわたり整備してくださっています。また、昭和61年には上伊那郷土研究会の月刊誌『伊那路』に、父、貞助像が目に浮かぶような寄稿があります。
八木健彦先生(東京大学名誉教授) 北海道大学を卒業され、研究分野は超高圧物理学、個体地球惑星物理学です。「ダイアモンド・アンビル」という、最高の硬度を誇る鉱物のダイアモンドを使って、100万気圧を超す超高圧を再現する加圧装置を用いて物質の特性を調べ、地球や惑星の深部構造を探求する研究等をされました。
今回のご訪問では、地学教室に並べられている貞助先生が採集され、健三先生が整備された岩石標本をご覧になられたり、貞助先生が学校環境整備計画の一つとして植樹されたイチョウを眺められたり、貞助・健三先生が当時暮らしていらっしやった円福寺の別邸あたりを往時の様子を思い浮かべながら歩かれたりと、秋の伊那の自然と歴史を楽しまれました。自然科学の情報誌『milsilミルシル』(2008)でも紹介されている「加圧すれば水に沈む氷ができる」というご研究の一端を実際にご説明くださり、未知の世界のお話を分かりやすく楽しくお話してくださいました。貞助校長から三代にわたって地球科学を研究されていることになります。
あわせて三代続くこのご縁を今後も大切にしたいと、不思議なご縁に感謝した一日となりました。